知っておきたいアレルギーの最新情報

1. 木の実アレルギーをご存知ですか?

木の実アレルギーの患者数

令和3年度の食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書では、木の実類アレルギーの割合が増加し、鶏卵、牛乳に次ぎ第3位となり、小麦を上回る数となりました。木の実の中ではクルミが2023年3月に表示義務品目になり、ピーナッツよりも多くの症例が報告されています。

原因物質
アレルギー症状で医療機関を受診し木の実が原因とされた患者率

増加の背景

美容・健康志向の高まりや、輸入量増加により「木の実」がより身近な存在になっています。
さらに、製品の外見だけでは判断しきれないものも存在するためアレルギーの方は注意が必要です。

くるみ輸入量(生鮮・乾燥)
こんなところにナッツ

消費者庁が定めるアレルギー表示推奨品目への追加

消費者庁が定めるアレルギー表示品目が改訂されました。木の実によるアレルギー発症者の増加を踏まえて、2019年9月にはアーモンドが特定原材料に準ずるもの(表示推奨)に追加され、2023年3月にはくるみが特定原材料に準ずるものから特定原材料(表示義務)になりました。現在、特定原材料は8項目、特定原材料に準ずるものは20項目あります。「特定原材料に準ずるもの」のうち、「カシューナッツ」については、現在、木の実類の中で、くるみに次いで症例数の増加等が認められています。※3

対策

食物アレルギー治療の基本は、「正しい診療に基づいた必要最小限の原因食物除去」です。※4
「木の実アレルギー」かもしれないなと思ったら、自己判断せず医療機関にご相談ください。

2. 「花粉症」と「食物」の意外な関係

スギ花粉症の有病率増加 (3人に1人がスギ花粉症)

スギ花粉症の有病率は、2019年には38.8%で10年間でおよそ10%増加しており、5~9歳で約30%、10歳代で49.5%と急増し、20歳代以上50歳代までのすべての年齢層においても40%を越す有病率でした。
近年の問題として取り上げられるスギ花粉症の低年齢化などから、さらに有病率が増加することが危惧されています。※5

スギ花粉症の有病率

花粉症が引き起こすもう1つのアレルギーPFAS(ピーファス)

PFAS(花粉ー食物アレルギー症候群)は、花粉症の患者さんが生の果物や野菜などを摂取すると口腔内に限局したかゆみや腫れが生じる病気です。
今や国民病となった花粉症の患者増に伴い、PFASも増加傾向にあります。※6

こんな症状ありませんか?

PFASの発症機序

実は、花粉症の原因物質と似た物質が特定の生の果物、野菜等の食物にも含まれています。
そのため特定の果物や野菜を食べると、花粉が侵入してきたと体が勘違いし、アレルギー症状を引き起こすのです。

(左)スギ花粉症の原因物質(右)トマトアレルギーの原因物質

花粉と交差反応性が報告されている果物・野菜

花粉と交差反応性が報告されている果物・野菜

対策

原因物質となる野菜、果物の除去が基本ですが、加熱調理した野菜や果物は摂取可能です。
違和感を感じたら摂取を中止することで症状は治まります。※9
「PFAS」かもしれないなと思ったら、自己判断せず医療機関にご相談ください。

出典

※1:
令和3年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書
※2:
農林水産物輸出入概況2009年(平成21年)確定値
農林水産物輸出入概況2014年(平成26年)確定値
農林水産物輸出入概況2019年(令和元年)
※3:
消費者庁食品表示企画課 事務連絡 令和5年3月9日
※4:
厚生労働科学研究班による食物アレルギーの診療の手引き2023
※5:
日耳鼻123: 485-490, 2020
※6:
食物アレルギー診療ガイドライン2021
※7:
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 4(3): 131–138, 2024
※8:
食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022(食物アレルギー研究会)
https://www.foodallergy.jp/2022-nutrition-dietary-guidelines/
※9:
厚生労働科学研究班による食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022